プログラム
臨床研究から見た機械学習の手法とその応用
近年では従来の研究手法に加えて機械学習を用いた臨床研究が増加しているが、臨床研究の視点から機械学習の手法を学ぶ機会は限られている。そこで本講演では最初に機械学習の基本的な概念を説明し、次に演者が行ってきた研究手法として教師なし学習(unsupervised learning)と呼ばれる探索型の機械学習と、教師あり学習(supervised learning)と呼ばれる予測型の機械学習をそれぞれ紹介する。探索型の機械学習では、従来は単一疾患と捉えられてきた疾患(敗血症など)をサブグループ化することで従来の2区分的な視点からは捉えられなかった患者層を同定し(phenotyping・ clustering)、同定された各サブグループにおいて予後や薬剤などの治療効果がどのように異なるかを検討する。予測型の機械学習では、従来はロジスティック回帰分析などを主としていた予測モデル構築において、lasso regression, random forest, gradient boosted decision tree, deep neural networkなどの手法を用いることでどのようなメリットがあるかを説明し、一例として救急外来でのトリアージを題材とした研究を紹介する。これらの機械学習の手法がどのようにプライマリケア領域での研究に応用できるか、その可能性に関して議論できれば幸いである。
後藤匡啓 MD MPH
福井生まれ福井育ち。2008年福井大学医学部卒。2010年から福井大学医学部附属病院救急部に所属し、亀田総合病院、西伊豆総合病院、東京都立小児総合医療センター、大阪府済生会千里病院千里救命救急センターなどでの研修を経て救急専門医を取得。後期研修中に多施設レジストリを用いた臨床研究を行い、その経験を踏まえてJEMNet論文作成マニュアルを執筆。2015年からハーバード大学公衆衛生大学院修士課程に進学すると同時にマサチューセッツ総合病院救急部にてリサーチフェローとして臨床研究を行う。2018年から東京大学公衆衛生大学院臨床疫学経済学講座にて臨床研究の指導・教育に従事している。