プログラム
これからの診断精度研究 - 臨床のArtをScienceへ
“従来”の診断精度研究では、評価の対象であるindex test(病歴・身体所見・血液検査・画像所見など)と、疾患のあり・なしを決定するreference standard (疾患のあり・なしの判定に関して、最も信頼性の高い検査)を比較して、感度、特異度、陽性・陰性尤度比を評価するという手法が用いられてきた。しかし、実際の医療現場における診断プロセスでは、複数の情報を組み合わせることで疾患の可能性を見積もっている。個々の情報は、互いに独立しているわけではないので(血圧と脈拍、発熱と炎症反応など)、それぞれの情報から得られる尤度比を単純に掛け合わせて、疾病の事後確率を求めることはできない。このように、従来の診断精度研究は、実臨床における診断プロセスを十分に反映していない。また、診断プロセスは通常、患者の基本属性、主訴といったシンプルな情報から、より詳細な病歴、身体所見、血液・画像検査といった順序で情報が得られる。そのため、血液・画像検査といった、診断プロセスの中で後から得られる情報に関しては、病歴や身体所見といった事前に得られる情報にどれだけの付加価値があるのかを評価すべきである。本セッションでは、“従来”の診断精度研究の問題点を踏まえ、 “これから”の診断精度研究の方法論について解説する。
高田 俊彦 MD, MPH, PhD
2004年千葉大学医学部卒。千葉大学附属病院総合診療部において、診断学を重視した診療に従事した後、2014-2016年京都大学医療疫学分野にて臨床研究のトレーニングを積んだ。2015年より、福島県立医科大学白河総合診療アカデミーの立ち上げに参画。市中病院で臨床に携わりながら、臨床研究の実践、指導に従事した。2018年よりオランダのJulius Center for Health Sciences and Primary Care, University Medical Center Utrechtに留学中。そこで学んだ診断精度・予測モデル研究の方法論を活かし、日本の臨床研究の発展に貢献したいと考えている。