質的研究論文、私はこう書く
松山 泰
自治医大 医学教育センター
人類が長年かけて収集した膨大な知見を基盤に、学術的・社会的に意義がある 新たな知見を獲得することが研究活動である。
量的研究では先人が得た知見をもとに仮説を立て、その仮説を検証し、仮説を 支持(or棄却)する結果が得られれば新たな知見とみなされる。1つの真実を追 求するという研究者共通の目的のため、万人で共有できる方法を用い、結果を示 す必要がある。そのためにデータを数値化し、標準化された統計学的手法で解析 する。
質的研究も先人の知見を基盤に、原則、研究を始める。しかし研究目的は探索 的なものとなる。また、研究者自身もしくは研究のコンテクストに影響されつつ データは解析される。真実は1つしかないという認識に縛られない一方、解析結 果の「確実性(dependability)」、「信憑性(credibility)」および「確証性 (confirmability)」を示し、また、異なるコンテクストへの「転用可能性( transferability)」を示す必要がある。
本講演では、これらの特徴に基づいた質的研究をどのように行い、どのように 論文化するか、私の経験に基づいて解説していきたい。