Research Questionが与えてくれた空間的・時間的つながり
山崎 大
京都大学 地域医療システム学/臨床疫学 特定講師

臨床研究の本質はResearch Question(RQ)である。研究デザインや統計解析は重要であるが、知識・技術を有する共同研究者の支援で解決する。しかし、RQは自分自身の中にしかなく、自分が次の数年間、何の研究に取り組み、誰と出会い、どのような時間を過ごすのかを決定する。この過程は一つの旅ともいえる。演者はこの10年間、脂肪肝や脂肪膵といった臓器に蓄積する脂肪と糖尿病について臨床疫学研究を行ってきた。旅のスタートは、北海道の市中病院で消化器内科医として勤務していた卒後5年目のとき、外来で非肥満者の脂肪肝患者が多いことに気付いたことであった。脂肪肝と糖尿病に関するRQを着想し、糖尿病の発症予防や改善のために、脂肪肝の改善が重要であることを示唆する研究につながった(Diabetes Care 2015, Clin Gastroenterol and Hepatol 2021)。そして卒後7年目のときに施行した超音波内視鏡検査で、膵臓にも脂肪が蓄積することに気付き、脂肪膵と糖尿病に関するRQを着想して研究が発展した(Diabetes Care 2016, J Gastroenterol 2020)。さらにはこの旅の過程でドイツの糖尿病研究者と出会い、複数臓器の脂肪分布に関する国際共同研究を発信するに至った(Nat Rev Endocrinol 2022, Diabetes 2022)。この10年間の旅は、北海道の市中病院の外来や内視鏡室で着想したRQが与えてくれたものである。本講演ではこれまでの研究を振り返りながら、なぜRQが臨床研究の本質で、地域や時間を超えた出会いを与えてくれるのかを伝えたい。

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